◆蔵を建てる◆ 1.まずは調査してみました
 明治時代に建てられた蔵の修理のお仕事をいただきました。「明治時代の蔵!?」どんな感じの蔵なんだろうと早速現地に行きました。
蔵の扉はまさに昔ながらの頑丈な造りです。きっと中にはお宝があるんだろうと入ってみました。
 あります、あります!お宝らしき品々が!
...お宝探しは鑑定団に任せて、建物の調査を始めます。
雨漏りがすると言われてました。トタン等で一時的な修繕がされていますが、いまではそれももう剥がれています。130年余の間、伊勢湾台風も含めて様々な気象環境を経ているのですから、よおく調べてみないといけません。
その結果、いろんな箇所に問題が出てることが判明しました。
写真で見ると「登り梁工法」の昔ながらの立派な梁にみえますが、よくよく調べてみると柱の中身は腐っていました。モチロン使えるものなら使いたいですが、残念ながらどうしようもありません。
 何と言っても一番の問題点は、長年の風雨で基礎である石垣が崩れ、蔵全体が傾いていることでした。写真の赤線でわかりますか?少し傾いているんですよ。これはもう基礎からやらないといけないなあ。
 

御施主様に調査の結果説明と当社のご提案をさせて頂きました。勿論予算の問題はありますが、御施主様の了承をいただき、蔵の造り直しをさせていただくことになりました。

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◆蔵を建てる◆ 2.解体作業
解体作業が始まりました。まずは蔵の顔でもある頑丈な扉から外します。さすが頑丈にできていました。重くて厚くて取り外すのも結構な作業となりました。
 土壁の土のぼう大な量にも驚きました。何度も塗り重ね頑丈に作られた昔の左官の仕事が伺えます。それにしても、多い!
最後はクレーンで一気に解体します。
 よく見るとやはり梁の中は腐っていました。人間でいえば骨粗鬆症みたいなものでしょうか。これでは残念ながら使い物にありません。

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◆蔵を建てる◆ 3.基礎工事
 御施主様から「石垣だけは残したい」との要望があり、石垣を残す形で基礎工事を進めていきます。
 石垣自身が崩れていかないよう補強も行っていきます。傾かないように注意を払いながら行います。蔵の土台はこの基礎工事が最も重要です。
さらに鉄筋で補強した石垣の中に、コンクリートをまるで厚いお皿に流し込むようにして、基礎としての補強を施しました。
 綺麗に土台ができあがりました。普段は全く見えないところですが、この土台が家を支えます。見えないところもキッチリと綺麗に仕上げる職人の技がよくわかります。

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◆蔵を建てる◆ 4.建方
 筋交いもしっかりいれて頑丈に組み上げていきます。
 更に耐震補強もしっかり行います。
 「登り梁工法」も以前と同じように行いました。この工法は屋根下の空間が広くとれるメリットがあります。
 ほぼ建方が完了しました。
◆蔵を建てる◆ 5.造作
 小舞竹を細く切って格子状にして、土壁の土台を作ります。昔の家はみなこうして壁造りをしたものでした。今、土壁の家はめっきり少なくなりましたね。
 2階の階段周りには、安全のため囲いを作っています。
 出窓囲いや軒下の木細工にも大工の技が見られます。蔵の外壁の下半分は、杉の本囲い造りです。
 蔵の入り口に、広縁を造りました。これで雨でも出入りが楽になります。
◆蔵を建てる◆ 6.左官
 土壁塗りです。格子の上に塗るのは結構難しいんですよ。表と裏の両方から塗って、約2か月間で乾燥させます。
 2階の内壁は漆喰で仕上げます。荒壁の上に、綺麗に仕上げていきます。
 外側の上半分も漆喰で仕上げます。直線をきっちり出す職人の技ですね。
 蔵の土台は2mの長石です。その周りの犬走りを仕上げていきます。
◆蔵を建てる◆ 7.建具
 蔵の顔ともいえる扉です。昔は漆喰で造られていましたが、さすがに今は難しいので、チーク材の正板で、金具を取り付けて重厚感を出しています。
 中の引き戸は昔のもの(100年経過)をそのまま利用しました。昔のイメージが一気にあらわれてきます。
 更に玄関の内側には、障子引き戸をつけ、採光をとって明るくすると同時に、中にいても穏やかな雰囲気を演出しています。
 御施主様の要望で急きょ飾り棚を造ることになりました。こんな融通が利くのも木の家の良さであり、大工仕事のやりがいのあるところです。
 棚の前には、御施主様が自ら選ばれたモンキーポット材をテーブルとして仕上げました。単なる倉庫ではなく非日常的な空間が出来上がりました。時には家族で過ごされるようです。

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